
日本はアメリカの影響を多大にうけ、今なおズブズブの関係だというのに、今のアメリカに影響を与えた南北戦争というものへの認知が希薄であるような気がします。
南北戦争を学べば、アメリカがわかります。
そして、南北戦争を学ぶなら、まずはこの本がオススメです。
概要
本著は、『宗教問題』編集長の小川寛大によって書かれ、2020年に中央公論新社から出版されました。アマゾンにてkindle版、単行本版ともに1980円で購入できます。
以下アマゾンからの引用
本書は、日本ではあまり知られていない南北戦争の実態を描き出す試みである。戦いの軌跡や、リンカーンやリー、グラントなどキーマンたちの動きなどを記す。そこからは超大国の源流も垣間見えるだろう。
南北戦争とは?
南北戦争とは、1861年~1865年に起きた、アメリカの内戦です。アメリカが南北に分かれ、主に奴隷制の有無を巡って争いました。産業革命による新兵器の登場によって、独立戦争や米墨戦争とは比べ物にならない、61万8千人の死者を出した戦争です。リンカーンやリー将軍など、歴史に名を残す人物が何人も活躍しました。北側の勝利で幕を閉じましたが、その影響は今日のアメリカでも色濃く残っています。
オススメポイント①
わかりやすさです。
今作は南北戦争初心者を対象に書かれているため、とにかくわかりやすさが追求されています。基本的に時系列に沿って物事が語られていき、わかりにくいと思われる単語などにはその都度説明が入り、初心者を置いていかない配慮が見られます。
小難しい文ではなく、カジュアルな文章も心掛けられている印象です。
また、ところどころに地図も載せられており、アメリカのどこで起きた出来事なのかを、視覚的に理解することもできます。
オススメポイント②
人物の性格や考え方、政党の説明がある点です。
わかりやすさと通ずる部分もあるのですが、「この人物が率いて、○○の戦いに勝利した」という淡泊な歴史解説ではなく、「この人物はこういう性格だったから軍が良く機能し、こういう考え方だったからこの場所に配置され、○○の戦いではこういう戦法を取る決断をしたから勝利した」という、読みながら納得ができる説明と文章構成なのです。論理的な順序で書かれているので、非常にスラスラと内容が頭に入ってきます。
そもそも何故南北戦争を学ぶ必要が?
百年以上前に起きたアメリカの戦争を何故学ぶ必要があるのか、という話です。本書の中に詳しく書かれてはいますが、先取りして述べてしまうと、現在のアメリカが未だに南北戦争の影響を強く受けているからです。
そもそも歴史とはそういうものではあるのですが、南北戦争は特に、その始まった理由や、終わった後の事後処理の失敗が、今のアメリカに直結しています。アメリカでは今も黒人差別が根強く残っていますよね。百年以上前に北部が勝利し、奴隷は解放されたと言うのに、どうしてまだ残っているのでしょうか。その理由の多くが、南北戦争周辺から読み解けるのです。
それらを学び、自分なりの考えを抱くことで、大きい目で見れば、日米関係をどう進めていくかの指標になりますし、小さな目でみれば、アメリカ旅行に行った時に、文化の違いを理解できたり、はたまた、アメリカ人との接し方で傷つくリスクが減るかもしれません。
裏オススメポイント
個人的には、裏のオススメポイントがあります。
あまり戦争を楽しんで学ぶというのはよろしくなさそうなので、裏としてオススメさせて頂きますが、本書は、戦争の部分をかなりドラマチックに描いている印象があります。
○○将軍がどういう考えで軍を進めたのか、どう部下を鼓舞したのかが詳しく書かれているのは既に述べましたが、それによって、勝つ方にも負ける方にもプライドとロマンが宿るのです。また、世論と政治によって戦争は動くものなんだな、という発見や、こういう全体的なプランに基づいて各所の戦争を起こすのだなという俯瞰的な視点も見つけることができます。新兵器開発の説明もされますし、リンカーン暗殺の舞台裏にもフィーカスが当たり、戦争そのものを楽しんで学ぶことができてしまいます。
人の死を楽しんで学ぶのは姿勢として不謹慎なことは間違いないですが、学ばないよりはいいと思います。大事なのは、過去の戦争から学び、今後戦争を起こさないようにすることだと思うので。
まとめ
いかがだったでしょうか。
南北戦争には学ぶ価値があると思いますし、南北戦争そのものが興味深い動きを見せる、歴史の醍醐味が詰まった出来事です。また、今でも内戦をしている国があります。その国への理解ももしかしたら深まるかもしれません。
手始めとして、この本ほど最適なものはないと思います。
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