映画感想『トロン:アレス』

映画

トロン:アレス とは (ネタバレなし)

『トロン:アレス』は2025年10月10日から劇場公開している、ディズニーによるSF映画です。1982年の『トロン』、2010年の『トロン:レガシー』に次ぐ、シリーズ三作目。一作目は、映画史上初めて本格的なCG技術を導入した作品として知られ、その系譜を受け継ぐように、革新的な映像技術が見どころのシリーズです。

一作目、二作目では、人間がコンピューターの世界に行く話でしたが、今作では、コンピューターがこちらの世界を侵食する、という、これまでとは逆のストーリーになっています。

予習はいるのか(ネタバレなし)

個人的な考えではありますが、予習はあった方がいいと思います。今作は一作目をかなりリスペクトした内容になっています。一作目を知っていなければわからないことが、小ネタの域では収まらず、ストーリーの根幹を担っていたと感じます。

そのため、個人的には、一作目の予習は必要かと思います。ただ、一作目は、現代の映画に慣れた目でみると、非常に陳腐な映像の映画です。観るのが苦痛と感じる人もいるかもしれません。そういう方は、登場人物の確認と、画像でもいいのでどういう世界観の物語かを理解しておくのをオススメします。ニ作目はむしろ観ない方がいいとすら感じました。その理由はネタバレあり感想で述べることとします。

プラスマイナス(ネタバレあり感想)

やはりトロンだ、という感じでしたね。

プラス

映像の面白さ、美しさは素晴らしかったです。前作以上に洗練された仮想空間のビジュアルと、それが現実世界にやってきた時の興奮は、SF的異物混入とでも言いましょうか、現実世界にいながら別世界を味わうことのできる、気持ちのいい映画体験でした。音もかなりよく、映像と組み合わさることで、没入感を強めてくれました。

マイナス

が、ストーリーは相変わらずのありきたりなものでした。見たことのない新鮮な映像の中で繰り広げられる、どこかで見たことのあるありきたりのストーリーのいびつな溝は深く、退屈に感じるはずがないのに、退屈に感じたくはないのに、退屈に感じてしてしまう瞬間が結構ありました。

プラス

とはいえ、アレスを演じたジャレット・レトの演技はかなり心に刺さるものがありました。頭脳肉体共に完璧に近い存在ながら、心を学習中であるという、完成された中にある不安定さをよく表現していましたし、その中で、少しずつ成長して「自分」というものを育てていく段階の踏み方も、かなり丁寧に、かつ観客にわかりやすく演じていてよかったです。序盤からずっとアレスの顔は出ているのに、最後の場面で初めて、アレスが人間になったんだ、と納得させられるだけの説得力がありました。

マイナス

一作目、二作目を予習してきた僕にとって、あまりにもニ作目を無視しているのが引っかかるというか、苛立ちました。ニ作目の主人公であるサムの扱いがあまりに雑で、細かいところを見逃している可能性はありますが、会社を不振にさせて行方不明になった人として終わっていったと感じています。クオラもどこにいったかわかりません。

加えて、ニ作目に比べて一作目がやけに神格化されていて、主役キャラがやたらケヴィン・フリンを崇拝して、その息子については一言も語りませんし、一作目の舞台がそのまま登場してきますから、まるで今作は、一作目の続編であるかのように感じました。

二作目が大好きかといわれると別にそうでもないんですけども、愛着はあります。ニ作目の存在を無視しながら、消そうとするような、嫌な感覚が最後の最後まで抜けず、気分が悪かったです。サムを蔑ろにするせいで、新しいキャラにも心を許すことができず、穿った目で観続けることになってしまいました。

ゼロ

というわけで、観終わった後に残ったのは、ゼロでした。面白かったと思う自分を、いやそうでもないだろという自分が潰し、かと思ったらいや楽しかったでしょという自分が新たに天から降ってきて、その攻防が今でも続いています。

プラスマイナスゼロです。

これがトロン、なのでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました