今回紹介させて頂くのは、中山由美著の、『南極で宇宙を見つけた!生命の起源を探す旅』です。
非常に面白かったです。
概要
朝日新聞記者の中山由美さんが、自身二度目となる南極大陸への挑戦を、自らの手で書き記す体験記です。第51次観測隊に参加する経緯から、実際に参加し帰ってくるまでを、軽快なタッチで記します。この本の大半の文章は、中山さんが実際に南極にいる時に書いていたもので、それらを編集・加筆して、本書が出来上がっています。草思社出版、238頁です。
中山さんについて
中山由美さんは朝日新聞に所属する記者・ジャーナリストで、この本で書かれている南極訪問も含め、三度南極大陸の地に立っています。レジェンドです。「科学ジャーナリスト賞2012」の受賞や、同時多発テロの実行犯の生涯を追う取材など、南極に限らず、様々な分野の今を切り取る記者です。

本書の魅力① 勇気を貰える
本書の魅力は、使い古された言葉ですが、諦めなければ夢は叶う、ということを結果で示す点です。一回目ならまだしも、ただの記者が南極に行くことは簡単なことではありません。しかも中山さんは、一度行った南極昭和基地ではなく、より危険で激しいセールロンダーネ山脈(通称セルロン)での取材を求めました。
何度も断られ、不可能を突きつけられましたが、彼女は諦めず、何度も何度もアタックし、ついにセルロン行きの切符を手にしました。
一度無理、と言われただけでは引き下がらない、諦めの悪さ。それが夢を叶えるためには必要なのではないかと感じましたね。
本書の魅力② 自然の魅力
南極で宇宙を見つけた、というタイトルは釣りタイトルでもなんでもなく、事実なのです。セルロンでは、数十億年前に降ってきた隕石がゴロゴロと転がっています。それらを分析することで、宇宙の始まり、地球の始まりを解明することができるかもしれないのです。
中山さんは隕石チームと行動を共にする時間が多く、彼女自身も隕石を発見していました。宇宙という広大な黒い世界を、真っ白で人工物の一切ない南極の中で見つけると考えると、壮大な自然の魅力を感じざるを得ませんね。
また、自然の危険をよく表してもいます。氷にぱっくりと空いた穴、クレバスに落ちるエピソードもありますし、マイナス十度を優に超える極寒を赤裸々に話す章もあります。
危険も含めて、自然の美しさなのでしょう。
本書の魅力③ 南極豆知識
南極観測船「しらせ」での生活の様子や、極寒の地での生活方法、移動方法、「食事」問題、「臭い」問題、「トイレ」問題など、僕たちが普通に生活するだけでは知ることのできない、クスリと笑えるような、なるほどと驚きが得られるような知識が各所に散りばめられています。
短い章の羅列かつ、そういった小話も豊富なので、飽きることなくスルスルと読むことができます。
南極なので、当然ペンギンの話も出てきます。ペンギンが大好きな僕は、非常に癒されました。
さかなクンも登場します。文章でさかなクン構文を読むと、よりカオスな感じに見えて面白かったです。
まとめ
南極にはなかなか行けるものではありません。本書を読めば、少し行った気分になって知識も増えますし、何より、自分が追っている夢への道を歩み続ける力を与えてくれます。
読む人の背中を押してくれる明るい本です。ぜひ読んでみてください!
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