皮肉と絶望の近未来SF小説『錆びた太陽』

小説
Shomin Shinkai
Shomin Shinkai

今回紹介する小説は『錆びた太陽』

するすると読める、風刺的でシニカルでコミカルな小説

概要

小説『錆びた太陽』は、恩田陸によって書かれた小説で、第一刷発行は2017年3月30日。恩田陸は『蜜蜂と遠雷』で直木賞を受賞したことで有名ですね。本作は朝日新聞出版から発行されています。

朝日新聞出版 最新刊行物:文庫:錆びた太陽
原発事故で汚染された地域を巡回するロボットたちのもとに、謎の女が現れた――。彼女の目的は一体何なのか!?立入制限区域をパトロールするロボット「ウ...

あらすじ

朝日新聞出版から引用させて頂きます。

原発事故で汚染された地域を巡回する
ロボットたちのもとに、謎の女が現れた――。
彼女の目的は一体何なのか!?

立入制限区域をパトロールするロボット「ウルトラエイト」の居住区に現れた、国税庁から派遣されたという謎の女・財護徳子。だが、彼らには、人間の訪問が知らされていなかった。戸惑いながらも、人間である徳子の命令に従うことにするのだが・・・・・・。

日本が原発事故(というか事件)によって多くの土地を失い、それから数百年経っても、まだ汚染された状態が続いているという絶望的な状況から話が進んでいきます。近未来SFという感覚で読み進めて頂ければいいでしょう。

今作の強み

強みはやはり、ブラックジョークたっぷりの皮肉めいた展開と言葉遣いの数々です。

舞台は近未来ですが、意識されているのは現代だと思います。日本でも実際に原発事故が起きているので。そんな中で、人間の傲慢さ、弱さ、頼りなさ、浅薄さ、金欲、出世欲をあからさまに揶揄するような書き方は、現代の風刺、問題提起のように感じます。

また、それ故に、どうしようもないこの世界をどう生きるのか、という前向きなメッセージも呼び起こしてくれます。初回限定メッセージカードにはこんな言葉があるそうです。

私たちは、こんにち、とても不条理で泥臭くて、もはや笑い飛ばすしかない世界に生きている。

読んでみて、まさにこの言葉が、本作を表しているような気がします。

今作の弱み

弱みなんて言葉は失礼ですが、常に軽快なのが、長所でもあり短所でもあるような気がします。

いくつか他の人の意見もブログ等で見てきましたが、そのような意見が多そうです。「物語に深みがない」「単調」「蜜蜂と遠雷には及ばない」などなどの意見をちらほらと見ました。

感情のないロボットの主観で語られるが故に、単調なのは仕方がないような気がします。

どんな人におすすめ?

普段小説を読まない方にオススメです。

文の量は初心者には多めで、A6判並製496ページありますが、余白がかなり多く、会話劇が多数を占めるため、極めて読みやすいです。

むしろ本を普段から読む人だと、一日かからず読んでしまえる可能性もあります。

初心者はとっかかりの本として、ベテランは息継ぎの本として、一冊読んで頂けたらと思います。すると、文体とページ数だけでは感じ取れない、自分の複雑な胸の心境を覗き込めるかもしれません。

ネタバレ気にしない感想をnoteにも書いているのでぜひ。↓

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