ネタバレ気にせず
ちゃんと青春があるのが辛い
辛い話です。原作でもアニメでも胸を痛め、今回もまた強烈に胸にくるものがありました。
普通の学生生活を経て社会人になっただけでも、どういうわけか青春時代が切なく心痛いものになったりするのに、それがこんなにも社会の悪と世の中の理不尽を見せつけられ、親友と道を違えた青春だなんて、心が痛むにも程があります。
特にこの総集編は、最後に映画だけの映像(写真)が組み込まれていて、夏油と悟の関係性だけでなく、硝子や灰原、七海との関係性が格段に濃密になっています。つまり、高校3年間の日常が強調されたことで、現実の切なさをこれでもかと引き立てていたのです。
卒業式に硝子と悟しかいない写真は、本当に辛くて素敵でした。今作では、悟以上に、硝子が3人の友情を大事にしていたように伝わってきました。
バランス
改めて懐玉・玉折を観てみると、バランスが非常に良いエピソードだと感じました。この後の呪術廻戦というのは、結構バランスが崩れ、作品を通してのまとまりが霧散し、その瞬間瞬間を楽しむバトルものに変わっていく印象があります。伏線が派手に無視されたり、過激な逆張りが多くなり、作者の存在が前に出過ぎるのです。
今作はキャラクターが生き生き動くことで物語を推進させ、笑いとシリアスのバランスもよく、娯楽作品としての完成度が高い上に、根底には冷たい社会の矛盾や、青い春の儚き美しさが佇んでいます。
有名店のパフェのように、唯一無二でありながら土台がしっかりとしていました。
そもそもこのエピソードが最初から映画のためにあるように感じるほど、まとまりとバランスがよかったです。
曲
オープニング曲の「青のすみか」、エンディング曲の「燈」は、稀に見る作品との親和性を見せています。キタニタツヤ、崎山蒼志共に、非常によく作品を理解していて、全く違うアプローチで作品を解釈しているのがよくわかります。
2種類の解釈がまさにオープニングとエンディングに相応しく、更にそこにまた、曲を逆に解釈したような素晴らしき映像が入り込み、格別な仕上がりになっていました。アニメ版でもよかったですが、映画版はより良かったです。
「青のすみか」は夏と青春の儚さ
「燈」は喪失と絶望と小さな希望
そんな感じです。
サウンドトラック
全編の音楽は5.1chサラウンドの劇場環境に合わせて再ミックスされたそうで、没入して作品に入り込める一つの要因になっていたと感じました。
特に、Deliriousという、五条悟が覚醒するシーンで流れるトラックが気持ちよく、スクリーン用にアップデートされたことで、より覚醒シーンに見ごたえが生まれていました。覚醒して最強になるシーンに、あえて落ち着いて洗練されたサウンドを合わせることで、五条悟の狂気っぷり、逸脱っぷりが強調されていると感じました。
壊玉・玉折のサウンドトラックは、照井順政が全て担当しているそうです。照井順政は、バンド活動をする傍ら、呪術廻戦0や、機動戦士Gundam GQuuuuuuXの音楽を手掛けている方だそうです。才能豊富ですね。

台詞
アニメ化された当時、YouTubeなどで壊玉・玉折の台詞が流行っていたのを覚えています。このエピソードは台詞回しが非常に頭に残るもので、中二心をくすぐるというか、日常生活で使ってしまいたくなる中毒性があります。
五条、夏油、伏黒の台詞なんて多用されていましたよね。今作を観て、台詞の一つ一つが上手いな、と改めて感じましたね。台詞によってキャラの個性が浮き上がっているような気がします。
まとめ
アニメの総集編というのは、金儲け臭の香りが強く、あまり得意ではありませんが、今作は毎話分かれて観るのではなく、一本の繋がりとして観る方が魅力が上がるエピソードだと思いましたし、曲やサントラのクオリティも異次元の高さなので、これは金儲けと知ってて尚金を払いたくなる傑作だと感じました。
呪術廻戦における、今後の鬱展開の序章でもありますね。
この映画を観た後、カラオケに行って「青のすみか」を歌ったのですが、二年前にもカラオケでよく歌っていたことを急に思い出して、凄く懐かしい気持ちになりました。というより、二年ってあっという間過ぎませんか?
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