映画感想『スーパーマン』

Shomin Shinkai
Shomin Shinkai

ジェームズ・ガンによって新しくなった、新生DCユニバースの一作目、『スーパーマン』の感想です。

新しいスーパーマンとは?

誰しもが知るヒーロー、スーパーマン。1938年にコミックとして誕生し、その後何度も映画されてきました。今作は、そんなスーパーマンの新しい物語です。今までのDCユニバースを破壊し、再構築するための一作目なので、初めての人でも楽しめる大傑作となっています。

監督は、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『スーサイドスクワッド』のジェームズ・ガン。主演は、日本ではあまりなじみがありませんが、『ツイスターズ』などに出演している、デビッド・コレンスウェットです。

スーパーマン : 作品情報・キャスト・あらすじ・動画 - 映画.com
スーパーマンの作品情報。上映スケジュール、キャスト、あらすじ、映画レビュー、予告動画。1938年に発行されたコミックに始まり、幾度も映画化されてきたアメコミヒーローの原点「スーパーマン」を、「ガーディ...

上映時間129分。

ここまで来てしまったかという絶望(以下ネタバレあり感想)

前半部は本当に絶望しました。それはつまらないということではなく、今までヒーロー映画であやふやにされがちだった諸々の事象がはっきりと描かれていたということです。

スーパーマンが自分の意思で戦争を止めに行ったら、それは領土侵害で問題になります。凄まじい力を持つ彼は、いわば意思を持つ兵器であり、各国は対処しなくてはならない、と。それはスーパーマンを凌ぐ力、つまり、スーパーマンをコントロールし、最悪殺す力を人間が得る口実となるのです。スーパーマンが正義をなそうとすると、世界が敵になる構図ができ上がっています。

さらに、スーパーマンを慕う人々も所詮現代人。SNSと世論によってあっという間に傾き、スーパーマンを侵略者だと認識します。ヒロインとも意見の相違でギクシャクとし、ヒーロー仲間ともそこまでの信頼関係はなく、なんというか、登場人物はたくさんいるのに、スーパーマンが孤独なのです。

さらに、敵がめっちゃ強いです。敵は1人ずつくる常識などこの映画では通用しません。無策ですぐ人を信用するアホのスーパーマンは、ものの見事に敵の術中にズブズブとハマっていき、見るも無惨に敗北を続けていきます。

国際問題、ネット社会、敵の多重攻撃。考えてみればただの現実ですが、ヒーロー映画でやったら、あまりにも冷たい作品になるでしょ、ということを全部やってしまうので、嫌な現実にスーパーマンが飲み込まれていく様がまぁ辛いのです。そういう意味で、絶望しました。ヒーロー映画のあやふやさが崩され、娯楽の象徴であるスーパーマンが、現実に苦しめられているのがきつかったです。

そういうわけで、前半はスーパーマンが何をやっても負けますし、どんどん追い込まれていきますし、それでもなんだか余裕あるフリをクラークがずっとしているので、まぁ観ていて情けなくなってしまって、不快感が体中を迸りました。

もちろん映像的には面白く、様々なキャラクターが出てきて全く飽きることはないのですが、フラストレーションが溜まっていきます。

だからこそスーパーマンがもたらす希望

だからこそ、ですよね。

スーパーマンがスーパーマンたる所以、ヒーローである所以は、彼が人をすぐに信用するアホだからです。

言い方を変えると、純粋で、善を信じているからです。この世界で生きていると馬鹿馬鹿しく感じる程の、クラークの純粋性。そのいい部分が、映画後半には怒涛と訪れ、「フラストレーション溜まってましたよね?」とジェームズガン監督がニヤニヤしているのが透けて見えるように、映画がどんどんと面白くなっていきました。

生物学的両親の遺言に取り憑かれていたクラークを救う、育ての親の愛情。クラークの真面目な正義感に、実は感化されていて、動き出す新聞記者、他のヒーローたち。単純な力で敵を倒す、アホなスーパーマンの圧倒的フィジカル戦法。

嘘で成り立ち、権力者が必ず卑怯な手を使って荒稼ぎをし、誹謗中傷で世論が決まり、善良な人々こそが蔑まれるこの世界で、それでも善良で正直に生きていくことがどれだけ尊いことか。映画後半の盛り上がりは、その尊さを堪能することで感じる盛り上がりです。

最強の力を持っているスーパーマンですら押しつぶされそうになる世の中です。ですが、スーパーマンが先陣を切って、最も人間らしい生き方を見せてくれます。その姿が力を与えてくれます。映画的なカタルシスも与えてくれます。

僕はすでにこの世界に縛られ、この物語が綺麗事だということはわかっています。ですが、子どもがスーパーマンを呼ぶ悲痛の表情に涙を流してしまったのも事実です。

僕がどこまで真っ当に生きていく覚悟があるのかを、試されているような気もしました。

スーパーマンという名前も格好もなんだかダサく見えてくる時代ですが、それでも彼がスクリーンに立つ意味がちゃんとあるような気がしました。

まとめ

いや、それにしてもジェームズガンの色彩感覚はいいですね。あらゆる色が溢れているのに、全く目がチカチカしないんですよね。むしろ色の幸福感みたいなものを感じ、気持ちがいい。

クラーク役のデヴィッド・コレンスウェットも当たり役でした。彼の表情が持つ生来の陽気さというのが、先ほど述べた色彩とよくマッチし、現代の闇に囚われない太陽のような明るさを度々感じました。彼の表情が良かったから、僕はスーパーマンのアホな行動の数々が我慢できたのかもしれません。なんで一度負けている相手に、作戦も修行もなく無鉄砲に突撃するんだ彼は。

考えさせられ、暗い気持ちになり、でも娯楽として爽快感のある、いいDCの再スタートでした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました