バスが山の中へと入っていきます。秋の頃の話です。
スーツケースと共に乗り込んでいた僕たちが、観光場所に到着してもまだ居座っているので、バスの運転手さんは非常に困惑していました。
「ここで降りなくていいんですか?」

運転手さんの気遣いに感謝しながらも、僕たちは降りません。今回の目的は貴船神社でも鞍馬でもなく、静原にあるカフェだからです。

静原は思った以上に何もありませんでした。バスから降りた瞬間、自分から降りたはずなのに、降ろされたという絶望がほのかに襲ってきたくらい、田舎です。
バスの本数が異様に少ないのも納得です。

しかし、田舎の朝は静かで落ち着きます。時々車が通る他は、極めて静かで、空気が澄み切っています。

青空と紅葉が古い街並みを覆っているのです。バスがなさすぎて1時間前に到着した僕たちは、当初の予定では静原の街並みをじっくり堪能するつもりでしたが、実際は街並みも何もあったものではなく、とびっきりの自然を浴びてぼーっとしていることしかできませんでした。

それがいいんですけどね。

ランニングや、山登りをしている人はちらほらといましたし、農業に勤しんでいる人もいて、人がいないわけではないのですが、自然をコントロールしようとしている人間がいるのではなく、ただ自然に溶け込んで人間がいる気がして、それがとても静かで厳かでした。

紅葉シーズンだったので、道すがらに赤と黄の木々を堪能することもできました。秋と春がなくなりつつある現代、このままどうせ我々人間は自然を破壊していくのでしょうから、美しい紅葉を見る時は、これが最後かもしれないと自分に言い聞かせます。



さて、本題です。そんな山の中に、わざわざ海外からのお客さんがやってくる程に人気のお店があります。Milletです。

街並み同様に落ち着いた雰囲気を醸す建物です。外では薪を切る男性の姿もあり、なんというか、神聖さを感じました。

思わず緊張してしまい、お店の中に入ることを躊躇ってしまった僕たちですが、薪を切っていた男性が優しく中に入ってくださいと言ってくれたので、なんとか都会の喧騒に汚れた僕たちも中に入る権利を得たような気がしました。

中に入ると女性の店主さんが優しく出迎えてくれて、ほっとしました。
切った薪はストーブに投げ入れられ、熱エネルギーを放射します。温かいです。


このカフェのランチは、自家製の野菜を始めとした創造的なヴィーガン料理です。

自然の荒々しさをあえて残したようなお皿の上に、キッシュ、おにぎり、ヴィーガンチーズ、自家製こんにゃくなどが整然と並んでいます。
特に美味しかったのはキッシュとヴィーガンチーズです。


新鮮な野菜とキノコをたっぷりと使ったサラダ。

芸術。お皿に亀裂が入っているのが好きです。

とても美味しい料理ばかりでした。感じたことのない味わいが口に広がることが多く、食の新世界が切り開かれていくようでした。お腹いっぱいになりました。
僕たちが1番乗りで、食べ終わる頃にやってきた次なるお客さん二組はどちらも中国の方でした。さぞかしくるのが大変だったでしょうに、それでもくる価値があるということを、食べ終えた僕たちは知っています。
都会とはかけ離れた山々の落ち着きと畏怖。ヴィーガン料理という馴染なき世界の料理。正直行く前も食べている最中も結構緊張していましたが、お店の外にでから、都会に戻って生活を続けている現在にかけて、徐々に緊張によって隠されていた発見や至福がヴェールを脱ぎ始めて、行ってよかったと心から思えています。
みなさんもぜひ。

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